最近すっかり映画が好きになった。去年から突然にそうなったのである。なぜだろうかと考えているがわからない。理由などないのだろう。こんな調子で、明日には映画が好きでなくなっているかもしれない。たとえば写真が好きになっているかもしれない。昨日と今日、今日と明日にはたしかな断絶がある。
長らく、自分は音楽をやりたいけれど音楽を知らないまま死んでゆくのだと思い込んでいたし、ひとたび音楽を手にしてピアノを弾き始めたら、今度は、自分には音楽しかないのだという思い込みによって自分の可能性を殺していた。もちろん、音楽そのものとは全く向き合えていなかった。音楽にすがりついていた。
「明日になれば今の気持ちは過ぎ去ってしまうかもしれない」。そう思うと、不思議と気が楽になった。〈今〉の純粋さが際立つからだろうか。
音楽に対する思いも、以前とは変わった。今は音楽と自分との〈遠さ〉があるけれど、音楽に対する自分の純粋さにおいて、正直であることができるようになった。